紙の歴史

長い間、製紙術の発明者は中国の蔡倫であるとされていました。それは「後漢書」に蔡倫が、樹皮、麻繊維、ボロ布などを用いて紙をつくり、105年和帝に献上したという記述があるからです。しかし、1957年、中国の西安市郊外の棚橋の遺跡から前漠武帝時代(紀元前140~87年)以前と確認された紙が発見され、この紙は大麻で作られていました。どうやら紙は、中国前漢時代の実際に労働に従事していた名もなき人びとによって発見されたもので、蔡倫の時代になって紙が紙らしくなり、彼がその功労者であったという説が主流のようです。

わが国に製紙法が伝えられたのは、推古天皇の時代(6世紀)、高麗の僧曇徴(どんちょう)によってと「日本書紀」に記されています。

それ以前は簡(カヌ)が使われていました。

木簡や竹簡のことです。木片や竹片を適当な大きさの札に揃え、ひもで順につなぎ合わせていったものです。この簡(カヌ)が紙(カミ)の語源になっています。また紙という文字が糸偏になっているのは、古代中国では情報を記録するために木簡などとともに、絹など織物も利用されていたからです。