紙袋

街中を大きな紙袋をさげて歩く姿はこの頃ごくありふれた風景となった。一目でデパートや商店、あるいは商品がわかるほど美しく目立つ模様が印刷されているので、一般人が広告をかって出ているかたちである。それに気づいていてもこの流行が一向に衰えずに男も女も、老人も若者も気軽に紙袋をもち歩いているのは、ふろしきやかばんよりも便利で割合に丈夫なことが理由の一つであろう。しかし、何よりも安価に量産できることが大きな原因である。

ひと昔前までは、紙袋づくりというのは貧しい家庭の代表的な内職であった。ロール紙(クラフトパルプをヤンキーマシンで製紙した粗末な紙)を材料とし、商店で使う小さな袋や封筒などを手仕事で張る賃仕事である。

明治や大正時代の小説や映画で貧しい家庭の描写によく登場した場面である。

現在では、紙袋は質も形も、生産形態も、すっかり変わり、用途も多方面にわたって重要視される存在になっている。各種の産業物資の輸送や貯蔵になくてはならない、包装材料である。製袋を専門に操業する会社は全国で100社ほどあり、工場の数も200工場に達するといわれる。