水に溶ける、溶けない?!

紙を使った文化財の保護、図書館の蔵書の劣化防止がテーマとして大きく取り上げられていますが、一方では紙とゴミは早く自然に還っていって欲しいと思われてます。

自然林の中では、老木や倒木が、風化にまかせて土に還り、また木として再生するという輪廻が繰り返されています。木、そして木を原料とする紙は、基本的には自然に還ります。

紙の機能、特性の1つに生分解性をあげることができます。合成高分子(プラスチック)では盛んに生分解性プラスチックの研究がなされていますが、紙には既に備わっています。それは、紙を構成する繊維がセルロースという天然高分子であるためです。このセルロースは、光に対しては抵抗性がありますが、熱、腐朽菌などの菌類や酵素にはあまり抵抗性がありません。

また、紙を形成し、あるいは紙力を生み出している元は水素結合が主体ですので、水によって容易に結合が離れたり、弱くなったりします。これらの理由で紙は分解します。特に水素結合については、水を介在して結合が成される一方、水につけると離れてしまいますが、繊維はこれらの水やちょっとした力では分解しないので、極めて再生に都合良くできています。

しかし、紙は分解するといっても見る見る間に崩れていく、溶けていくということはありません。ある程度の時間と引きちぎるような剪断力が必要です。まして、薬品を添加して繊維間結合を強化した紙や塗工した紙などは、意外と分解しませんし、破れません。またそうでなければ困る部分もあります。