紙の前の紙は パピルスに羊皮紙

紙の誕生以前、人類はいったい何によって意思を伝え、記録を残そうとしたのだろうか。石、骨、木、砂という答えが返ってくる。しかしピラミッドなどの石造物に象形文字を彫ったり、 竹や木でつくる札に文字を刻んだりするのは、膨大な時間と労力を必要とするうえ、読みにくい運びにくい不合理な方法であった。

紀元前300年、エジプトでパピルス草の茎からつくるパピルスという紙の前身といえるものが誕生、ヨーロッパでは羊の皮からつくる羊皮紙が生まれた。パピルスは湿気と栄養のゆたかな泥中で生育し、1年で5メートルにも達する葦に似た多年草の草です。

昔昔、エジプトのナイル流域にはパピルスの原野が果てしなく続いていたという。人々はこの草を装飾品や食用に用い、燃料としても使ったりまた、茎を削って敷物をつくり、縄や籠を編んだ。パピルス草は古代エジプトの人々にとって生活にかかせない貴重な材料だったのである。彼らはパピルスの茎の髄を取り出して薄く削ぎ、これを貼り並べて乾かし紙をつくりあげた。パピルス紙の誕生である。

こうして古代エジプトで発明されたパピルスはその後、ギリシャ、ローマなど各地に普及しあらゆる書写の材料となった。パピルスの名は「Paper」の語源として今日まで残っている。