蜂と砕木パルプ

軒下や木の枝などでよく見かけるのはアシナガバチの巣です。ハスの実をさかさにしたような形で、灰褐色をしています。10数匹から20~30匹の蜂が群がって、時には人を刺します。スズメバチは人の頭ぐらいからその倍以上の大きさの巣を、高い軒下などに作ります。

  蜂の巣のぶらり仁王の手首かな  一茶

フランスの博物学者レオミュ-ルは、スズメバチを観察していて、その巣が紙によく似ていることを発見しました。そのころの製紙原料は主として亜麻布や木綿布のボロを使っていたのです。 1719年に書いた論文で、彼は次のように述べています。「蜂は、自分たちが住んでいる森の木から繊維を取りだし、非常に良い紙が作れることを、われわれに教えてくれる」。しかし、この提案にたいして世間は冷淡でした。これを受け継ぎ砕木パルプを発明したのは、ドイツ人ケラ-でした。1840年のことですから、レオミュ-ルの発見以来、120年以上もたっています。

王子製紙「紙の話」より