楮はクワ科の植物で、葉も桑のように大きく、春おそく新葉が萌え出ると同時に黄白色の花を開きます。樹皮を探って和紙の原料にするため、山間の集落などで栽培されます。
山中や楮の花に歌書かん 乙由
楮を原料とする紙で、室町時代末期から江戸時代まで、最高級の公文書用紙としてさかんに漉かれたのが、奉書紙です。白くて厚く、丈夫で書きやすい紙として尊重され、とくに越前奉書は日本一と高い評価を得ています。
水によくなじみ、墨汁や水絵の具をよく吸うなどの特性があるので、現在も美術用紙として珍重されています。
楮とともに和紙の三大原料と呼ばれるのが三椏と雁皮です。この二種はいずれもジンチョウゲ科の落葉灌木で、三椏は駿河半紙、雁皮紙は薄様の、鳥の子などの名で知られてきました。
明治のはじめ、大蔵省印刷局は雁皮をつかって紙幣の製造を試みましたが、その栽培が困難だったため、栽培の容易な三柾にきりかえました。いらい三椏を原料とする日本の紙幣は、その優秀性を世界に誇ることになりました。
(『王子ペーパー89』参照)