お札の第1号は大黒様ほか

お札の第1号は大黒様

日本銀行がお札を発行しているのは、誰でも知っていると思います。そのお札が最初に発行されたのは、明治18年で十円札でした。その十円札には、俵の上に鎮座する大黒様の絵が描かれており、俗に「大黒札」と呼ばれていました。一説によれば、当時の不況を脱出するため商売の神様「大黒様」に御登場を願ったものだといわれています。

このお札には、今日では珍しい発行の背景となる法律、「明治十七年五月廿六日大政官布告第拾八号兌換銀行券條例ヲ遵奉シテ発行スルモノ也」が明記されていました。

この十円札発行から100年以上の現在、日本経済は驚くほど発展し、円は世界の準基軸通貨の地位を獲得して、毎日の新聞でドルとの交換レートが問題になるほどです。そして円はYENと表記され、略号として¥が使用されていますが、この大黒様の十円札に早くもこの表記YENが使用されていました。

なぜお札に人物像?

どんなに巧妙で精巧に偽造されていても、バレてしまうニセ札ですが、ニセ札判定に一役買っているのが、お礼に印刷されている人物像です。

お札に人物像を使う理由は、いくつか考えられています。
まずひとつは、権力を持っていた国王などが、権力誇示のために.自分の肖像を使うようになったということです。イギリスのエリザベス2世像がその代表例です。

次に、人物像というのは確実に真似することが容易にできないという点で、いくら精密につくられていても、ニセ物であるかどうかの判断がしやすいからです。

3つめは、金種を区別しやすいということです。
お札の人物像は、その国の象徴であったりヒーローであったり、有名な文化人であったりするのですが、どの顔にも多くの人が親愛感を持っていると思います。日本ならば、夏目漱石は千円札、福沢諭吉は一万円札とすぐに頭に浮かんできて、金額などが容易にわかり、親しみやすいということです。
余談でありますが、お札の製造費、つまり原価がどのくらいかというと……、一万円札が約20円、五千円札が約18円、千円札は約10円ぐらいだそうです。
この製造費とは発行元の日本銀行が大蔵省(印刷局)に支払う金額です。

発行された裏白のお札

我が国で使用されているお札は、紙質、印刷とも世界一流で、最もニセ札のつくりにくい紙幣といわれています。そのためには、スカシはもちろん、表面の印刷にもニセ札をつくられないような、さまざまな工夫が表にも裏にも施されています。

ところが、日本のお札の歴史のなかで一度だけ裏が真っ白なお札がつくられたことがあります。
昭和2年3月、当時の大蔵大臣片岡直温の不用意な発言が契機となって金融大恐慌に見舞われてしまいました。このため市中で流通するお札の量が不足し、廃棄することになっていたはずの十円札を倉庫から出して使用する事態になりました。

しかし、それでも絶対量が足りず、大量にお礼を印刷することにしましたが、時間もないため、当時の日銀文書局長の発案で、印刷に便利な裏白二百円券を急造することになったのです。
このお札は、4月25日から発行されましたが、恐慌が落ち着くとすぐに回収され、わずかの間だけで姿を消しました。それだけに現在ではマニアの間で大変に人気のあるお札となっているのです。