紙の夕テとヨコ

紙は水がなければ造れません。ほどほどに与えられた水分で紙は強くなりますが、多すぎる水は紙を弱くします。また湿気によって紙は伸びたり縮んだり、寸法安定性の面からいえば水は紙の敵です。味方になったり、敵になったりする水。ここでは湿気という敵についての話をします。

紙にはタテとヨコの方向があります。抄紙機で流れ出てくる方向をタテといい、それに対して直角の方向をヨコといいます。普通、機械で抄かれた紙は抄紙方向に引張られながら抄かれますので、繊維は引張られた方向に配列します。これがタテです。手抄き紙の場合は、引張られないので、タテとヨコの方向はありません。機械抄きの紙を四角に切って水につけてみてください。どんな紙でもカールします。カールした方向がヨコです。タテはカールしません。

何故でしょうか。それは紙の基になる繊維の湿度変化が、長さ方向と直径方向(太さ)で、かなり差があるからです。一般に木材パルプの場合、相対湿度を0から100%に変化させると長さ方向はわずか1%程度の伸びですが、太さは20~30%も太くなります。これは繊維を構成するセルロース分子が、長さ方向には空間のようなものがあり、そこに水の分子が入り込み、繊維を膨張させてしまうからです。もし紙の表と裏で繊維の配列状態が同じなら、平面的にヨコが伸びるだけでカールは起きません。カールが起きるのは紙の表と裏で伸び率に微妙な差があるからです。

繊維分散液で繊維が並び、それをワイヤーで引いていきます。この時、慣性の法則で引くワイヤーと分散液の間にスピードの差が生じます。この乱れが表と裏の伸び率の差になって現れてしまうのです。

伸び縮みの様子を事前に把握しておくことが、使用時のトラブルを避けるキーポイントといえるでしょう。

(王子製紙(株)紙の話より)