数年前より、図書館等で蔵書がボロボロになってしまう(紙の劣化)ことから中性紙が話題となってきました。製紙メーカー各社では、この問題にとりくみ、保存性の高い、中性紙の開発を行ってきました。
紙の劣化のメカニズム
紙を抄適する工程の中で、インキのにじみ止めにロンジンサイズ剤(松脂石けん)を加えます。そのロンジンザイズ剤を紙の繊維に定着させるために、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を使います。
このロンジン剤は酸性の条件の下で紙の繊維に定着します。硫酸バンドは水に溶けるとアルミニウムイオン(弱アルカリ性)と硫酸イオン(強酸性)となり、紙が酸性となります。 紙に含まれている水分が高い状態では(空気中の多湿度)、硫酸バンドが乖離して紙全体が酸性となり、この酸によって紙の繊維が加水分解され、徐々に劣化していきます。
このようにして従来の抄造方法で製造された紙(酸性抄紙)は、時間の経過とともに、劣化が進むというわけです。
中性紙の登場
そこで、ロンジンサイズ剤による抄造方法の代わりに、中性サイズ剤による抄造方法が研究開発されました。中性の条件で効果のあるサイズ剤(アルキルケテンダイマー系、無水コハク酸系等)が使用されます。これにより、PHを中性から弱アルカリ性に保った紙を抄造することができるのです。
又、従来は紙の不透明度、白色度、平滑性、柔軟性の向上のため填料としてタルク、クレが使用されていますが、中性紙の場合炭酸カルシウムが使用されます。炭酸カルシウムは、白色度、不透明度も高く、紙に柔らかさがでるというメリットがあり、アルカリ性なので、空気中の亜硫酸ガス等の酸性物が入ってきても中和する働きがあり、酸性紙に比べると、紙の劣化の進み方が遅く保存性があるのです。
酸性紙と中性紙の見分け方
中性紙、酸性紙といっても見た目では差がありません。ところが燃やしてみると、中性紙は燃えかすが大体白く、酸性紙は黒くなり区別がつきます。酸性紙の灰が黒いのは、硫酸アルミニウムの作用で紙が不完全燃焼するためと考えられています。
(平成6年JP書籍用紙見本帳より)