家庭紙のいろは

ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの家庭紙で大手製紙の相次ぐ値上げが話題になっている。重油価格が主な理由になっていることもあって、過去の石油危機が思い起こされているようだが、当時とは状況が違う。

1973年の石油危機。アラブ諸国の石油輸出削減が、トイレットペーパー騒動となって人々の生活を揺るがした。燃料不足で紙生産が縮小するとの不安が広がったためだ。

当時は一部に便乗値上げもあり、店頭価格が2倍近くに跳ね上がる例もあったが、「今回は全く違う」と大手製紙は口をそろえる。重油価格は高騰したが、出荷価格は過去最安値圏。コスト増で大手各社の家庭紙事情は赤字となっており、「価格復元をお願いしているだけ」との姿勢だ。

例えばトイレットペーパーの店頭価格は、石油危機が落ち着いた74年でも4ロール入りで240円程度。現在は12ロール入りで350円程度と1つ当たりは当時の半値。当時の大卒初任給が8万数千円だったことを考えれば、価格水準の低さがわかる。

重油消費産業だった製紙だが、73年に比べて重油使用量は約半分。紙の生産量は約2倍に増加しており、省エネも進んでいる。

毎日使うティッシュペーパーやトイレットペーパーだが、需要には波がある。最大の需要期は冬場だ。ティッシュ・トイレットペーパーとも12月の出荷が最も多い。風邪などで鼻をかむためティッシュ使用が増える。トイレットペーパーは寒さで主に女性のトイレの回数が増えることが伸びにつながるようだ。

また、需要拡大に大きく寄与したのが価格の低下もあげられる。5箱をパックした販売方法が80年代以降に登場すると、店頭での特売は一段と活発になる。それまではティッシュ1箱120円程度であったのが、5箱で500円を切る価格で売られるケースが増え、競争から値下がりも進んでいった。

日本のティッシュの価格体系は世界的に見ても最も低い水準で推移しており、メーカー側も花粉時期の保湿ティッシュなど、付加価値のあるものに力を入れている。

(「紙の新聞」より)