チラシやポスター、それにダイレクトメールなど、現在の紙製の広告のルーツ「引札」。江戸の昔から、多くの人の心を捉えるために、楽しく、面白く、美しく、興味深い内容を目指して作られた、まさしく広告の原点というべきものです。
引札には、何色かで刷られた色刷りのものと、1色で刷られたものがあり、1色刷りは、商品目録や新製品・安売りのお知らせが半紙のような薄い紙にびっしりと刷られていました。
色刷りは、縁起物やおめでたい絵柄を用いた華やかなものが多く、礬砂(どうさ)引きといわれる、にじみを防ぐ加工を施した奉書紙を使っています。
ダイナミックな構図と鮮やかな色使いの引札は、和紙ならではの風合いと共に人気を呼び、やがて双六や暦、あるいは明治の頃には写真などを貼ったものなどへ転化し、さまざまな表現が凝らされました。
気に入った引札を部屋に飾るということは、現在でいうポスターを飾ることと同じで、芸術品ではないが装飾品としての魅力があったのでしょう。