水なくして紙は存在しない

地球上の植物は水によって繁茂する。植物から繊維を取り出し、水に浸して細かく叩きつぶすと、水を吸ってしなやかになる。それを水に分散させ、網でこすと薄い層になり、水が絞りとられた後も、繊維は絡み合ったまま密に寄り添う。紙はさまざまな形や大きさの繊維が複雑に絡み合った層であるため、紙の構造はいわゆる多孔質である。繊維は長さがさまざまなセルロール分子が集合したものである水分子はこの空隙に自由に侵入しセルロースと結合することができる。紙が湿気あるいは水を吸収しやすいのはこのためである。紙の毛管現象によって水はどの方向へも浸透する。このことは、紙が筆記、印刷の材料となる大切な特性なのである。

洋紙は水性インクがにじみすぎないようにさまざまな処理が施される。これをサイジングという。油性のインクを用いる場合には、粘土、デンプン、カゼイン、あるいは合成高分子などで加工し、適当な吸油性をもたせる。

なんといっても紙の本質は水と仲が良いことである。水なくして紙は存在しえない。1トンの紙の製造には約100トンの水が消費されるといわれている。