紙は木材の繊維細胞から作られています。この細胞の壁はセルロースという高分子化合物で構造を形成しています。セルロースは合成に非常に難しい物質で現在でもまだ合成の緒についたぐらいです。そこでこの合成に微生物の力を借りることが行われています。木材の場合、パルプや紙の種類・用途・機能によっては一緒に存在するリグニンなどの物質が邪魔になったり悪さをしたりしますのでセルロースだけを合成させるわけです。
昔から、酒樽の内壁や周囲に蜘蛛もいないのに蜘蛛の巣が張ることが知られていました。実はこれがセルロースでありセルロースを合成する微生物、セルロース産生菌の仕業だったのです。多くの研究の結果、セルロースを効率的にタンクで作ることが出来るようになりました。現在は価格の高さが大きなネックとなっていますが、その特性と機能から、スピーカーコーン紙等に用いられるようになってきました。今後さらに量産体制が確立されたり、機能をコントロール出来るようになれば、森林の保護にもなる新しい紙になっていくことでしょう。